園遊会の着物コーディネート
春と秋の2回開催される園遊会は、天皇、皇后両陛下の国民への慈愛のお姿と
暖かいお言葉がいただけて、ほっくりと心温まる礼装の場面です。
ご招待される方々に、園遊会での着物のコーディネートポイントをまとめました。
まず、一番重要なのは、天皇皇后両陛下の開催ということで、何よりも品格有る装いで有るべきです。
品格とは、きものの決まり事である「礼装の格に合っている」ことが第一ですが
その他にも考慮すべきポイントが有ります。
○格のコーディネートポイント~セミフォーマル、振袖や訪問着~
開催趣旨が、天皇皇后様が野外で主催して下さる社会的な功労者慰労への社交の宴会ですから、
格を意識しつつ、招待されたご自分の立場を間違いなく表現出来る着姿が好ましいです。
昼間開催されることと、懇親の宴会ということから、格は、第一礼装よりも
少しだけくだけた格になります。
和装の場合、未婚女性の第一礼装は振袖で、既婚女性は、留袖か訪問着になります。
第一礼装の留袖は、格は高いのですが、上半身に柄が無いことから
華やかさや個性を表現するには大人しいです。
近年は、訪問着をお召しになる方が多いです。
皇室の皆様の格に準拠するとか、皇室の皆様が留袖をお召しになるのでそれを避けて訪問着に
するという考えも有りましたが、今の時代は、それよりも、柄や色合いで多くを表現出来る
訪問着で個性を出すことが好まれると思います。
男性は紋付羽織袴または背広です。
家紋は、五ツ紋背の中心に一つ、左右の外袖に一つずつ、両前身頃に一つずつの計5つです。
以上の格式を保ちつつ、他の要素や自分の個性に合わせて最終的な着姿が決まります。
訪問着、袋帯、帯締め・帯揚げにもそれぞれ格が有りますし
その組み合わせて一層格を上げたり調整することも出来ます。
○趣旨によるポイント ~和風の柄~
園遊会での装いは、男性はモーニングコート、紋付羽織袴、制服または背広です。
「赤坂御苑という和風庭園で開催される天皇皇后両陛下主催の園遊会」ということで
日本庭園に合い、日本らしさが表現された和風の柄の着物と帯が必要です。
花柄や風景や幾何学などで和柄がベターと言えます。
洋風さが強い絵柄は、場面に調和しずらくなります。
○季節による色と柄のポイント ~明るい綺麗な色と春や秋の和柄~
春と秋の園遊会では、季節が異なることから、似合って見える色合いと柄が違ってきます。
春(4月20日)は、明るい日差しになりますから、透明感が高い綺麗な
色合いが好感度が高く見えます。暗く濁った色合いは、この季節には損をする
色合いになります。
秋の園遊会は、日差しが落ち着いていますから、逆に、濁ったような暗い色が素敵に見えます。
白っぽいとか薄い色合いは、「寒々しく」みえます。
春の柄と秋の柄も異なりますから、季節感を間違わないことです。
春の花:桜、牡丹、あやめ、木蓮、藤など
秋の花:菊、金木犀、萩、ツワブキなど
松や竹柄もよく使われます。
○時間によるポイント ~格や豪華さを少し抑えたセミフォーマル~
園遊会の開催が午後の2時からということは、昼のフォーマルになります。
昼は夜のフォーマルよりはドレスダウンされたセミフォーマルと言えますから
格がそれだけ下がります。
豪華さも抑えられます。つまり、家紋の数が少なくても良いとか
帯やきものの金銀の豪華さがそれほどではなくても良いということになります。
訪問着の場合、家紋を入れる方は少なくなりました。
○場所によるコーディネートポイント ~少し強い色へ~
赤坂御苑で開催されますから、その背景にある青い空と木々の緑の強い色合いが
着姿をぼかしてしまう傾向に有ります。
青い空と緑の木々の色合いはかなり強い色ですから、白やグレーの室内でベスト
と思われる着姿よりも、少し明るさが強いきものや帯を選ぶことが必要になります。
帯揚げや帯締めの色を強くするだけでも良いですね。
○個性によるコーディネート ~
人の個性に合わせたコーディネートは、人の外見だけではなく、目に見えない
内面のセンスにもあわせる必要が有ります。
外見は、肌や髪の色がとても重要な要素になります。
肌色は、ピンク系、イエロー系、オークル系に大きく分かれます。
お肌の色によく合う色合いの着物を首元に持ってくることが重要です。
それによって、肌と着物の色が溶け合うように調和して、肌が美しく見え
お顔がくっきりして白く見えます。
肌色に合わない色の着物は、残念ながら老けて見えたり寂しく見えます。
次に、目や髪が黒い方は、全身の中に強さがある色合いを使うコーディネートが
必要です。それによって強さのバランスが取れて調和して見えます。
目に見えない内面のセンスとは、可愛いものが好き、強く見せたいなどで
それらによって、必要な色数や色、柄が違ってきます。
以上をまとめますと、園遊会参加者の着物姿は、格や豪華さを少し抑えたセミフォーマルの
振袖や訪問着で、明るい綺麗な色と春や秋の和柄で、室内よりも少し強い色が必要ということになります。